アナフィラキシーとは

アナフィラキシーと聞いて、人それぞれイメージするものがあると思います。
人によってはハチに刺された際などに想起する単語でしょうが、その実態は外来の抗原に曝露することによって自己の免疫が過剰になることによって自己の組織や体の恒常性が乱されることです。
過剰に生じた抗体によって好酸球や肥満細胞からヒスタミンなどの化学物質が放出されることが原因で全身に様々な症状を来たします。
気道ではヒスタミンの作用によって気管の肥厚や狭窄が起こります。
そのために呼吸困難などの症状を示すのですが、アナフィラキシーに陥った患者さんにこの時の感想を聞けば、「陸の上でゆっくりと溺れていく感覚」と答える人もいます。
それほどまでにどうしようもない苦しさがせり上がってくるのですから恐怖を抱かずにはいられないでしょう。

他に血管の症状も現れます。
アナフィラキシーの主体となるヒスタミンの作用には末梢の血管を広げる作用があります。
血管は血を流すホースのようなものですが、これが急激に広がってしまうとどのようなことがおきるのでしょう。

夏場、水撒きをするホースを考えてみましょう。
ホースをつぶせば狭くなった出口から勢いよく水が噴き出します。
反対に、緩めればぼとぼとと垂れるだけになるはずです。
血管でも似たようなことが起こり、血管径が急激かつ過剰に広がることによって血管を流れる血液の勢いは弱まっていきます。
これがアナフィラキシーの怖い症状、循環不全でありショック状態を引き起こします。
これらの症状では致死的な状態になることも少なくはありません。

現に、アナフィラキシーでは循環不全による多臓器不全や気道分泌物や気道狭窄のために死亡することが専らです。
アナフィラキシーの症状には湿疹もあります。
抗体が過剰産生されることで皮膚に紅斑状の湿疹が現れるのです。
多くはこれが何なのかを同定できませんが、ハチに刺された、ないしアレルゲンを摂取したなどの既往を念頭に鑑別する必要が医療者の側にはあります。

アナフィラキシーに効く薬はある?

アナフィラキシーは前述の通り、本来自身を守るために備わっている免疫機構が暴走することによって起こります。
ひどい場合は死亡する可能性もあるため全く侮れない症状ですが、現代医学の範疇で言えば有効な根治的治療はほぼありません。
アナフィラキシーを引き起こす可能性がある抗原に触れさえしなければ症状が現れないのですから、まず抗原曝露を真っ先に防止する手立てしかアナフィラキシーショックを完全に防ぎきる方法は無いのです。
では万が一アナフィラキシーを引き起こしてしまった場合、生きるためにどんなことが出来るか考えましょう。

まず、考え付くのは症状の原因であるヒスタミンを分泌させないこと、つまり抗体の産生を抑制することです。
そのために使用される薬剤は主に免疫抑制剤です。
これにより、新たな抗体が産生されるのを防止し、抗原が入ってきても反応しない状態となります。
しかし、免疫抑制剤によって症状の進行は防ぐことが出来ても放出されてしまったヒスタミンの作用は継続しますので血圧の低下や気道の狭窄は持続します。
この症状を和らげるために出来るのは対症療法のみです。

気道の狭窄が見られるならば気道を広げる薬剤を投与したり、血圧の低下とショック症状が見られたら循環の維持を図りましょう。
このような具合に、進行すると死亡してしまいかねない症状を抑えていくことが実臨床の場ではアナフィラキシー治療の上で欠かせない視点になります。
こうした薬物療法を継続して状態の急変を防止しつつ、ヒスタミンが代謝されて症状が収まるのを待ちます。
特に、気道狭窄に対して有効な薬剤は喘息などの発作時の治療にも使われており、携帯がしやすく使用の手順も簡便です。
早期に対応すればそうそう命を落とすことはありませんが、一歩遅れればその分命が脅かされるアナフィラキシーについて、良く知り落ち着いて対処できるようになることが命を救う一歩です。

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